#まなざしのかたち『雨上がり、水平的に、ストリートにて』10分
※『#まなざしのかたち』の一部の映像を別のバージョンとして再編集した映像作品

映像作品『#まなざしのかたち』とは

 本作は、農学者の田中樹と文化人類学者の清水貴夫の調査地であるアフリカや東南アジアにおける様々な人間活動を記録した映像を基にし、フィクションを織り交ぜた断片的な映像の連なりによって構成された実験的な映画のような作品です。研究者のフィールド調査に同行して撮影された映像素材、フィールドでの自分自身の体験を綴った撮影日誌、これらを基本的な素材に、それらの素材を前にして思考錯誤する〈行為〉をヴォイス・オーバーとして織り交ぜて編集しています。ときには、被写体である研究者や現地の人々が撮影した映像も混じっています。
 この映像作品には、ふたりの語り手が存在します。アフリカや東南アジアで研究者の活動を記録しながら自身の体験をつぶやくカメラマン、それからこのカメラマンが記録した映像を見ながら思索する鑑賞者です。自身の映像体験を創造的に読解しようとする両者の語りは、ときに交差しながら、小説のようにフィクショナルな変容も含んだものとなっています。
 本作のねらいは、フィールドでの撮影体験において、研究の「余白」にあるものを芸術の文脈に投げ返すことによって、その撮影体験を「余白」ではなくむしろ「中心的なもの」として扱うための映像メディアの独自の使い方を提示することにあります。ふたりの研究者に同行しつつ、あえてはっきりとした物語や主題にまとまらないような断片的なことがらとして、フィールドを撮影した映像に独特な編集とポストプロダクションを付け加える。
 今日の映像体験の中心は、暮らしの中で自分たち自身によって撮影・編集されるもので、私たちは、私たち自身が暮らしの中で記録した断片的な映像を鑑賞しています。だからこそ、それと同じようなアプローチで作られた『#まなざしのかたち』によって、鑑賞者に対して、「映像を撮影・編集し、鑑賞する」という日常的な行為がどのような創造性に関わるのか、またそのような映像体験は人間社会にとっていったい何なのか、という問いを投げ返すことが大切なのではないかと考えています。『#まなざしのかたち』とは、いつまで経っても完成しきらず、試行錯誤するプロセスを記録した映像の断片で、それらの断片的な映像をどのように見るのか、と考えるプロセスもまた作品の一部であるかのような表現の〈場〉なのです。

澤崎 賢一
2021年2月16日

クレジット

作品名#まなざしのかたち
時間/制作年124分/2021年
撮影地ブルキナファソ、タンザニア、ケニア、ベトナム、セネガル、日本
監督・撮影・録音・編集・製作澤崎 賢一
企画・製作一般社団法人リビング・モンタージュ
出演田中 樹, 清水 貴夫, 須田 征志, 宮嵜 英寿, Julien Sawadogo(Tilmnenga), Aboudulaye Ouedraogo
Lamin, Zakaria, Hamidou Sawadogo(Imam), Ahamed(Rastafarian), Baay Fall Ndem
Jeremiah Saitabau Tanin, Benedict P. Mapunda, Jacob B. Chadibwa, Oumarou Ouedraogo
コメンタリーHabaco, mon
撮影田中 樹, 清水 貴夫, 須田 征志, Lamin, Zakaria
カラーグレーディング苅谷 昌江
音響調整岡本 遼
謝辞高橋 悟, 石橋 義正, 佐藤 知久, 井上 明彦, 長谷 正人, Melanie Jackson, Johnny Golding
溝口 大助, 手代木 功基, Benoit Hazard, Christin Adongo, 高木 佳子, Huynh Thi Thuy Tien
京都市立芸術大学, 総合地球環境学研究所, 一般財団法人 地球人間環境フォーラム, 風人土学舎
京都精華大学 アフリカ・アジア現代文化研究センター, 摂南大学, Royal College of Art
助成公益財団法人 トヨタ財団, 公益財団法人 日本文化藝術財団, 公益財団法人 野村財団
文化庁「⽂化芸術活動の継続⽀援事業」

関連書籍

澤崎賢一「暮らしのモンタージュ:フィールド研究の余白」

対話型学術誌『といとうとい』Vol.0
京都大学 学際融合教育研究推進センター, 2021, pp.82-89

多くの研究者が実際に現地におもむき海外の生活を直接体感するフィールドワークを行なっている。ただし成果物である論文に収まらない「余白」にこそアカデミアを更新する「体験」が潜んでいるのではないか?映像作家として活躍する著者が、研究者の体験がもつ価値に新しい視座を与える自身の手法について考察する。

★学術誌に掲載された論考は、京都大学学術情報リポジトリに掲載されているPDFのp.19から読むことができます。
https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/264459

★対話型学術誌『といとうとい』特設サイト
http://www.cpier.kyoto-u.ac.jp/project/toitoutoi/

★Amazonで購入
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4908679096