主な関心や活動

1.風に問い、土に聞き、人びとに学ぶ

アフリカやインドの半乾燥地を歩き回る中で、優れた在来農法や農具に出会いました(写真2)。インドの在来農耕は、数千年にもわたり多くの人口を支えてきました。西アフリカの半乾燥地では、「押しスキ」と呼ばれるとても素朴なつくりの農具が、脆弱な砂質土壌を壊すことなく、土壌水を保全し、肥沃度を維持することを知りました(写真3)。訪れる土地を学校に、そこに住まう人びとを先生とする様々な学びが私の研究の原点です。

写真2:インド中部・デカン高原、家畜が引く伝統犁による耕起作業
写真3:ニジェール南部、伝統農具での除草作業

写真2
写真2

写真3
写真3

2.暮らしの向上と生態環境の保全

人口増加と人間活動の拡大により、土地資源や生態環境が劣化するといわれています。これは「ヒトvs自然」や「問題発掘・問題解決」という二項対立的な認識や対処法につながります。それを参照しつつも、私は、別の可能性-「ヒトも自然も」や「潜在性発掘・活用・問題相殺」-を探りたいと考えています。

(1)砂漠化対処

 砂漠化は、その地域の土地資源や生態環境と人びとの暮らしを支える生業の不均衡によって引き起こされます。その対策として、土壌保全や植林などが行われていますが、人びとの暮らしの向上を伴わなければ誰も実践しません。研究仲間や住民有志とともに、「何もしないで(経費や資材や労力をかけずに)作物の収量を増やし風食(風による土壌侵食)を抑制する技術」をつくりました(写真4)。

写真4:ニジェール中南部・テッサアウア周辺、耕地内休閑システム/風による土壌侵食の抑制と作物収量の向上

写真4
写真4

(2)スパイスの村をつくろう

 タンザニア東部のウルグル山域と島嶼部のザンジバルで、バニラやクローブ、カルダモンなどの香辛料作物を軸とする屋敷林・樹園地をつくる研究と社会実践に取り組んでいます(写真5)。これは、暮らしの向上(貧困削減)と土壌や森林の保全などを同時に成立させる生業システムです。いずれは、タンザニア版の「里山」の形成や社会的弱者層を支援する仕組みつくりへとつなげるつもりです。

写真5:タンザニア東部・ウルグル山域、バニラ/屋敷林の強化による生計向上と生態系の保全

写真5
写真5

(3)放牧性小家畜の飼養

 ベトナム中部フエ市近郊の山間地で、住民有志とミニブタや野生鶏交配種の飼養、ホロホロ鳥の飼養、養蜂などに取り組んでいます。ミニブタは、山岳少数民族が長年にわたり飼いつないできた在来種です(写真6)。野生鶏交配種は、文字通り、ニワトリと野生鶏のハーフです(写真7)。いずれも、病気に強く、粗食で、希少で、飼養管理の手間が少なく、土地資源や生態系に大きな負荷をかけない特徴があります。ミツバチも農業的には「家畜」に分類され、ここでは、小規模農民に向けて、家屋の周辺に養蜂箱を置く「周年庭先養蜂」を試みています。野生ミツバチの養蜂の実験も進めています。これらは、薬剤(例えば、抗生物質や成長ホルモンの入った飼料、合成農薬など)を使わない安全・安心な地域特産品になりそうです。

写真6:ベトナム中部・フエ市近郊、在来のミニブタ/生計向上と遺伝資源の保全
写真7:ベトナム中部・フエ市近郊、野生鶏との交配種/少数民族の知恵からの地域産品の形成
写真8:ベトナム中部・フエ市近郊、庭先養蜂/未利用資源の活用と生計向上、生態環境に負荷をかけない生業


写真8

3.社会的に弱い立場にある人びとへの目線

 農学や開発学の研究に取り組む時、しばしば、「誰のために、何を、どのように」を自問します。社会実践につながる取り組みには、多くの人びととの暮らしや将来が関わるためです。また、私にとって、その道標(みちしるべ)は、社会的に弱い立場にある人びと(老齢者、寡婦、障がい者、少数民族、経済的貧困者など)です。簡単ではないことは承知していますが、このような人びとが参加できる取り組みのあり方を頭の片隅に置いています。

写真9:セネガル西部、村の子供たちに囲まれて
写真10:ベトナム中部・フエ市近郊、水上生活民の定住政策で貧困化した地区/放課後学習支援教室の黒板
写真11:ベトナム中部・ホイアン市、耳が聴こえない言葉が話せない若者が運営しているカフェ/研究をどう役立てればいいのか

活動の様子

映像作家の澤崎賢一が、ウェブマガジン「シネフィル」で、ケニアで田中の調査に同行した際の様子を綴っています。カメラマンの目線で、調査の様子や現地の人々の暮らしが綴られた記事です。