新作映画『まなざしのかたち』

2020年末 完成予定

 映画『動いている庭』の監督・澤崎賢一による新作映画『まなざしのかたち』は、研究者の田中樹(環境農学・土壌学・地域開発論)と清水貴夫(文化人類学・アフリカ地域研究)の調査地であるアフリカや東南アジアにおける様々な人間活動を記録した映像を基にした、フィクションを織り交ぜたドキュメンタリー映画です。

 本作は、「映画を鑑賞する」という行為の創造性をテーマにしています。複製技術の時代において、芸術作品の「作者」という主体の創造性はすでに失われたとされています。本作では、独自に吟味した〈あいだのまなざし〉という方法によって、この無力な存在としての「作者」を宙吊りにさせようと試みています。そのために、映像を鑑賞する鑑賞者の創造的読解の可能性を探求しています。私たちは、アフリカや東南アジアで記録され、収集された沢山のイメージ群をどのように創造的に読解することができるでしょうか。今日の映画とは、撮影や編集の過程を通じて、私たちが何者であるのかを知ることができるメディアなのです。

 この映画の語り手は、ふたり存在します。アフリカや東南アジアで研究者の活動を記録しながら自身の体験をつぶやくカメラマン、それからこのカメラマンが記録した映像を見ながら思索する鑑賞者です。自身の映像体験を創造的に読解しようとする両者の言葉が交差することによって、映像表象のレベルで多様な人間活動を見つめるための「まなざし」が形つくられることになるでしょう。この「まなざし」を通じて、異文化圏における人間活動から映像メディアが日常生活の中にもたらす「人間の生そのもの」に関わるフィールドの潜在性を、〈知の余白〉として浮かび上がらせることが本作のねらいです。


フィールドの潜在性を浮かび上がらせる

 僕は、これまでアフリカや東南アジアや日本各地で、多彩な専門領域の研究者のフィールド調査を映像で記録してきました。彼らのフィールド調査の現場の多くは、人間生存のための生業や開発が資源・生態環境を刻々と蝕みつつあるなど、時限を帯びて深刻化する諸問題に直面しています。他方で、調査過程を「暮らしの目線」から眺めると、依然として存在する多様な文化・社会・生業、在来知、人々の活力などに、諸問題の解決や未来社会の形成に向けた潜在性を見ることができます。僕は、これらの潜在性を「フィールドの潜在性」と表しています。

 ここで僕と研究者たちとのあいだで共有されていた問題意識は、従来のように研究成果を論文で記述するだけではフィールドの潜在性を十分に捉えられていないのではないか、ということでした。論文のみならず、より人間の感性に働きかける映像メディアを活用し、論述することとは質的に異なる方法によって研究成果をアウトリーチすることができれば、諸問題の感覚的あるいは感情的な共有に有効なのではないでしょうか。この作品は、この研究者たちと共有されていた「フィールドの潜在性を浮かび上がらせるために、どのようなアウトリーチがあり得るのか?」という問いに対して、芸術実践の文脈から応えていこうとするものです。

澤崎 賢一


作品名まなざしのかたち
時間/制作年110分/2020年末 完成予定
撮影地ブルキナファソ、タンザニア、ケニア、ベトナム、セネガル、日本
監督・撮影・録音・編集・製作澤崎 賢一
企画・製作一般社団法人リビング・モンタージュ
出演田中 樹, 清水 貴夫, 須田 征志, 宮嵜 英寿, Julien Sawadogo(Tilmnenga), Aboudulaye Ouedraogo
Lamin, Zakaria, Hamidou Sawadogo(Imam), Ahamed(Rastafarian), Baay Fall Ndem
Jeremiah Saitabau Tanin, Benedict P. Mapunda, Jacob B. Chadibwa, Oumarou Ouedraogo
コメンタリーHabaco, mon
撮影田中 樹, 清水 貴夫, 須田 征志, Lamin, Zakaria
カラーグレーディング苅谷 昌江
DTPデザイン和出 伸一
謝辞高橋 悟, 石橋 義正, 佐藤 知久, 井上 明彦, 長谷 正人, Melanie Jackson, Johnny Golding
溝口 大助, 手代木 功基, Benoit Hazard, Christin Adongo, 高木 佳子, Huynh Thi Thuy Tien
京都市立芸術大学, 総合地球環境学研究所, 一般財団法人 地球人間環境フォーラム, 風人土学舎
京都精華大学, 摂南大学, Royal College of Art
助成公益財団法人 トヨタ財団, 公益財団法人 日本文化藝術財団
公益財団法人 野村財団, 京都市文化芸術活動緊急奨励金

※本作は、京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程での研究・澤崎賢一「〈あいだのまなざし〉と〈知の余白〉の創造性:映像表象の学際的活用のアナザーモデルの研究」(予備論文)の成果の一部です。」