中心となる3つの研究テーマ

清水貴夫は、2003年にNGO活動に従事し、その後研究に転身。
主にブルキナファソの都市の若者、子どもたちに焦点を当てたいくつかのテーマについて研究を進めています。
人びとと語り合い、生活を共にしながら、課題に取り組んでいます。
ここでは、中心となる3つの研究テーマを紹介します。

1. ラスタファリアン

1つ目は、ワガドゥグのラスタファリアンの研究です。ラスタファリアンは、ジャマイカなどの奴隷経験を持つ祖先をもつアフリカ出身者たちによって始まった、反植民地主義的かつアフリカ第一主義的な思想、運動を担う若者たちのことです。レゲエ歌手が典型的なイメージです。多民族、多宗教な多様な背景を持つ若者たちが、「アフリカ的」というアイデンティティを共有することで、結びついている様子から、アフリカ的なラスタファリアンの在り方を描きました。

2. ストリート・チルドレン

2つ目の研究は、ストリート・チルドレンに関するものです。ラスタファリアン、ストリート・チルドレン、共にストリートを中心的な生活の場としていますが、彼らの間にはほとんど交渉はなく、それぞれが1980年代に注目を浴びるようになった都市の子どもたちは、居場所を失った貧困状態にあるとされました。ブルキナファソでも数千人に上ると言われるこうした子どもたちが、どのような背景からストリートで生活するようになったのか、ということを考えています。とても興味深いのが、社会からの逸脱者とみなされがちな子どもたちが、実に素直でしっかりとした会話ができることでした。そして、その背景に目をやっても、もちろん、貧困や家庭不和が原因でストリートにやってきた子どもも少なくないものの、その多くが、伝統的なイスラーム教育に纏わる背景を持った子どもたちでした。本来のストリート・チルドレンとは様相が異なるこうした子どもたちをストリート・チルドレンにするのは(と呼ぶのは)だれか、そして、なぜそう呼ばねばならなかったかを明らかにしようとしています。

3. 子どもたちと宗教(イスラーム)

3つ目の研究は、2つ目の研究から派生した、子どもたちと宗教(イスラーム)に関わるものです。ブルキナファソをはじめとする西アフリカのイスラーム圏には、クルアーンを学ぶ私塾が数多くあります。近年、こうしたインフォーマルな私塾に代わり、この地域にも近代教育が広まってきましたが、イスラーム教育はいくつかの方向に形を変えて維持され、現在も人びとの強い支持を受けています。なぜイスラーム教育が、人びとの支持を集めるのか。そこには、「教育」が目指してきた学力の向上のみが、必ずしも人びとが望むものではなかったことが考えらえます。教育とはなんなのか。子どもが育つ環境はどうあるべきなのか。ブルキナファソの教育と子どもたちの生活から、こうした普遍的な問いを考えています。

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ウスビ・サコ/清水貴夫 編著『現代アフリカ文化の今―15の視点から、その現在地を探る』(青幻舎, 2020年)

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15の領域から、アフリカ文化の“今"を探ってゆく

これまで西洋の視点から語られることが多かったアフリカは、いま、グローバル化のもと、独自の芸術や文化を新たな地点へと育み、価値を見出しはじめている。
その動向はアフリカ大陸だけでなく、ヨーロッパやアジアなど移住/離散した先においても、ふつふつと芽を出し開きはじめているのだ。
本書では15の領域から、現代のアフリカ文化を切り開く。
京都精華大学アフリカ・アジア現代文化研究センター開設連動企画


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